働き方改革関連法が施行され大企業・中小企業も法律の適用を余儀なくされた。時間外労働の上限制限や年次有給休暇5日の強制付与、更には月60時間を超える時間外労働に対する割増率のアップの適用などである。経営者側からすればネガティブな法律改正ばかりだと考えられるだろう。又一方で多様な働き方の選択肢を要求している。即ち出社勤務か在宅勤務か?本業勤務か副業勤務か?などである。コロナウイルスの影響もあり在宅ワークは急速に広がった。又雇用調整助成金を利用している企業では従業員を休業させている。その従業員が持て余した時間を利用して他の会社で就業する副業なども見られる。先述したように経営者から見ればネガティブと感じる方も多いであろう。従業員側から捉えるとどうだろう。有給休暇が強制的に付与されるので休みが増えた。時間外労働の上限が出来たので働かなくてもよくなった。ワークシェアリング的考え方で仕事が再配分されるので仕事量が軽減されて助かるなどの見方もあるかもしれない。
このような状況で最低賃金が全国平均28円と過去最大の引上げ率3.1%が本年10月から適用すると発表された。これもまた経営者にとってはショッキングな報道であろう。従業員は賃金がアップすると喜んでいる人も少なからずいるだろう。高卒初任月給を逆転する最低賃金時給となることも考えられる。正社員より時短社員の方が賃金は高いという事にもなりかねない。日本の最低賃金は主要先進国の中では極めて低い。内閣府発表2021年、フランス・イギリスは1302円、ドイツが1206円、アメリカは1060円だという。日本は今回の引上げで930円となったが、トップとの差は372円もある。韓国よりも低い。デフレ不況からの脱却は未だ出来ずの状況である。賃金の低さは付加価値生産性の低さでもありGDPにも大きく影響している。
つまり、今の日本の課題は労働者一人の付加価値生産力を引き上げることである。今の低さでは世界の国々と経済的に戦えないということである。
働き方関連法が先行し経営者には罰則適用と従業員には飴のような有給休暇付与などの項目が前面に出て来ているが、この捉え方を錯覚すると、とんでもない結末を迎える事になる。経営現場では有給休暇を取らせることが出来ないので更に人を採用してシェアリング、一方でコロナの影響もあり仕事が少ないのに勤務させてワークシェアリング等のケースがある。
上記の事は絶対やめるべきである。仕事遂行スキルが極めて低下する原因となる。
今、経営側も従業員側も求められているのは、「働き方の本質を変えてください」と云う事である。つまり一人の従業員の付加価値生産性をアップしてくださいと云う事なのです。
デジタル化は具現化された処方の一つであるが、経営者側もこれに取り組まなければならないし、従業員側もこれに応じなければならないのです。経営者側従業員側のどちらが有利かなんて存在しないのです。どちらも経験のない世界にチャレンジしなければならない環境に置かれているのです。錯覚はしないでください。