未払い残業代の請求トラブルを、5分の1の金額で決着させた事案
- トラブルの概要
- 本件は、退職した元従業員から未払い残業代(約230万円)の請求があったことに端を発します。
その請求に対して、会社はすぐに対応せず、請求を放置したまま約1年が経過していました。すると、裁判所から訴状が届きます。元従業員が、弁護士を雇って労働裁判を起こす事態へと発展してしまいました。加えて、請求額も1,000万円を超える金額に拡大していました。
会社が迅速な対応をしなかったことで、事案が何倍にも大きくなったケースです。
裁判所から訴状が届いた段階で、当事務所へ相談が寄せられました。
- 解決結果
未払い残業代200万円を支払うことで、和解しました。請求額の5分の1です。
また、迅速に和解案を提示したことで、約1ヶ月で解決をしました。
- 解決のポイント
- 迅速な対応と、根拠のある計算式
- 依頼を請けてすぐ、クライアント企業を訪問し、元従業員の出勤簿やタイムカードなどを精査。退職前2年間の残業時間を正確に算出しました。その数字をもとに、未払い残業代を200万円と算出。
- この金額が根拠のある数字であることを立証するために、元従業員の勤務状況を5年前まで遡って精査。明確な根拠と共に、数字を算出しました。
- また、未払い残業代請求における判例も考慮し、裁判で争った場合にも勝てる金額を算出しています。
- その上で、元従業員と和解へ向けた話し合いをする旨、会社にアドバイスを行いました。
- 裁判になる前に和解する
- 未払い残業代を請求されるケースでは、裁判になると付加金の請求が加わります。付加金とは、残業代を未払いにしていた企業に対するペナルティー的な意味合いとして、会社から元従業員へ(未払い残業代に加えて)支払うものです。未払いと認定された残業代と同額まで請求されますので、未払い残業代トラブルが裁判になると、解決費用が2倍になります。
- そのため、裁判になるまでの段階で解決することが非常に重要になります。
- 根拠のある残業時間を精緻に計算する
- 未払い残業代を請求されるケースでは、「元従業員側が主張する残業時間」に基づいて、未払い残業代を計算していきます。多くの場合、それは「実態よりも過度に多い残業時間」となっています。
- そこで、根拠のある残業時間を精緻に計算することが必須になります(多くの場合、請求額を大きく下回る金額になります)。「根拠のある残業時間」とは、労働基準法で規定された労働時間であり、就業規則に則った労働時間であり、かつ出勤簿・タイムカード・賃金台帳などで証明できる労働時間のことです。
- こうした「根拠」をしっかり調査することで、支払う必要のない請求金額を洗い出すことができます。
- バックアップ・プランの策定
- 和解がメイン・シナリオですが、万一、和解を拒否された場合の対策として、裁判へ備える必要があります(そのサポートを行いました)。具体的には、残業時間の計算とその算出根拠。就業規則、出勤簿、タイムカードなどの証拠書類の整理。元従業員の勤務状況を客観的に検証できる資料などです。
- それらの資料を準備・作成することで、万一裁判に進んだ場合でも、解決の費用を大幅に抑えることのできる可能性が高まります。また、この対策によって、和解案の魅力が高まり、元従業員を和解へと決断させる重要な要素となりました。
- 迅速な対応と、根拠のある計算式
- まとめ
本件には、重要なポイントが2つあります。
ひとつは、「迅速さ」です。元従業員からの最初の請求に対して、会社側が迅速に対応しなかったことで、請求額が230万円から1,000万円超に増加してしまいました。また、労働裁判へと訴えられる事態にも発展しています。初期の対応が迅速さを欠いたことで、問題が何倍にも大きくなったケースです。
一方、訴状が届いた後は、迅速な行動をしています。その迅速さが、裁判を回避し、早期の和解へとつながる大きなポイントでした。
もうひとつは、「解決に向けた戦略」です。出勤簿やタイムカードから根拠のある残業時間を算出し、それをもって和解へと進む。万一、和解が拒否された場合に備えて、裁判用の証拠書類も作成しておき、その旨を元従業員に伝える。裁判を進めた場合に勝ち取れることのできる金額が(和解案と比較して)大きくないと判断すれば、和解案に合意する可能性は高まります。トラブルは、最小限の費用で、かつ早期に解決できます。
これら2つのポイントは、いずれも「豊富な実務経験」から来る勝つための戦略です。労働トラブルをどのように解決するか? は、実務経験の豊富さに大きく影響されます。信頼できるエキスパートに相談することが、何よりも大切だと考えます。